一般参加者編

chapter1 行列を制するものはコミケを制す
 朝の一般行列はコミケ最初の儀式。最近は驚くほどスムーズにはなってきたけど、それでも行列開始時間から入場開始の10時までかなりある。どうせ並ぶなら上手に並んで、来るべき入場を良いコンディションで迎えよう。本番はあくまで入場してから。もちろん会場内でも行列はあなたを待っているのだ!

check1 カシコク体温調節
 強い日差しをじっと受けていると日射病は熱射病になる危険性が高い。これらは体温の調節がうまくいかないと起こる。そんな事態に陥らないための基本は体温を上げすぎないこと。特に汗やトイレを警戒して水分を摂らずにいると体温はあっという間に上がってしまう。水分は15分おきに1口というように少なく、こまめに取るのがコツだ。
 直射日光から肩や首などを守るために大判のタオル等を頭からかぶるのも有効だ。タオルは極力薄く軽い物の方がよい。
 嫌われ者の汗も体温調節のためには不可欠。汗は蒸発しつつ体温を下げるからうまく蒸発させれば汗の量も減らせる。そのためには肌は露出するよりも汗を吸いやすく乾きやすい素材の、風通しの良い服で体を覆ってしまったほうがよい。たとえばポリエステル系の速乾素材製Tシャツ等をアンダーに着て、同様の長袖のシャツを重ねれば、空気断熱効果と汗の上手な放出が両立できて一枚だけより涼しいのだ(アンダーシャツがメッシュ状に織られたものなら一層快適!)。
 これらのウェアはアウトドアショップなどで販売されている。Tシャツで三千円、シャツが七千円前後とお値段は少々張るがその快適さは保障つき。ぜひ一度お店に足を運んでみよう。
 なお、制汗剤類は汗をかきにくくし、炎天下の屋外ではかえって体温調節を妨げることにもなるので要注意(人が密集する行列でスプレーを使うのはマナー面からも問題アリだ)。
 体温調節がうまくいかないと体力の消耗も激しく、汗だくでは自分も周囲の人も不快だ。汗を正しく、最低限にかいて上手に体温を調節しよう。

check2 上手に立つ、座る
 一般行列に並んでいる時間の多くは座っている。ただ座るにしても、熱くなる硬いアスファルトの上に直に座っていると体温が上がりやすく、疲れやすい。できれば折り畳み椅子などを用意したいところだが、入場後は不要となるのでお荷物なのは確かだ。そこで、やはりアウトドアショップや旅行用品店などで売られている携帯用エアクッションの携行をオススメしたい。座り心地、断熱性が高く、かつ大変軽量で使わないときは畳んでポケットにも収まる優れモノだ。
 ところで、暑い場所でずっと体を縮めて座っているといわゆる「血が下がった」状態になる。特にそのまま寝ていたり水分補給が滞り、心臓の働きが低下している時などは血流が鈍くなりやすく、そこでいきなり立ち上がったりすれば急性の貧血を起こす危険が大きい。
 ひたすら座っているよりも、時々適当に立ち上がったり、軽く体を動かすようにしよう。長時間じっと座り続けているのは体への負担が大きいのだ。
 周囲の人たちも同じ参加者、お互いにちょっと挨拶を交わし、御喋りをしたり買い物やトイレに行くタイミングを融通しあって楽しく行列時間を過ごすのがベスト。

chapter2 移動は軽やかに
 どんどん巨大化し、見るべきところも増える一方のコミケ。移動を上手にこなすことが限られた時間でコミケを楽しみ尽くすための唯一の方法だ。ただし、会場内はどこも走ってはいけない。それは肝に銘じておこう。本がほしいのは皆同じ、そこで欲望に負けてルールが守れないようではコミケ参加者の資格なしだ!!

check3 混雑をスリ抜ける
 場所によっては驚異的な人口密度となるコミケ会場。人込みを通り抜けるだけでも一苦労だけど、みんながちょっと気をつければずいぶんラクになるぞ。
 まずは『自分のボリューム』を把握しよう。空身の時に比べ、鞄やリュックを持ったり、カートを引いたりすればその分ボリュームは増す。それが認識できていないと、避けたつもりで引っ掛けたということになりかねない。
 リュック類はかさばりやすく、死角になる後方にボリュームが増すので気付かずに周囲に迷惑をかけたり、いちいち背負ったり下ろしたりと混雑の中では非常に取り回しが悪い。その点ではバイクメッセンジャー(自転車便)が使う『メッセンジャーバッグ』がいい。これはショルダーバッグの親戚のようなもので、必要な時にさっと前に回して開け、背負っているときは薄く腰から下背部に密着する形になってコンパクト。B4サイズが折らずに入り、容量もたっぷりと、コミケで使わないのはもったいないようなナイスアイテムなのだ。
 それらのアイテムの導入とともに忘れてはいけないのが先にも書いた『周囲の人達も、自分同様よい本を求める仲間』だということ。お互いに相手をきちんと認識して、進路を譲り合ったり身体をちょっと避ける。声に出して『通してください』『ありがとう』等の挨拶を交わすといった極めて当たり前のことを心がけるだけで、同じ人口密度でもずいぶんスムーズになる。結局それで得するのは自分自信だという事にもう少し気付いてもよいのでは。

check4 歩いて歩いてまた歩く
『コミケとは歩く事と見つけたり…』なんて言葉はないけど、とにかく歩かなくちゃ始まらない。移動を支える足元はしっかり固めよう。
 靴は履きなれたものがいいのは確かだけど、くたびれたスニーカーもまるで魔法のように履き心地がよくなり、疲れも減らせる方法がある。
 その名は『形成インソール』といって、大きな靴屋さん等で三千円くらいで扱っている。タネを明かせば靴の中敷を取り替えるというコトなのだけど、侮るなかれ驚くほどの効果があるのだ。インソールはたくさんの種類があるので『形成インソール』と指定するのがポイント。中にはあなたの足にあわせたオーダーインソールを作ってくれるお店もあるが、いくつか試して一番しっくり来るものを選ぼう。後は靴ひもをいつもより少しきつめに締めれば、靴底が足に吸い付いてくるようで歩くのが楽しくなるぞ。革靴用やパンプス用などもあるので詳しくはお店に相談してみよう。
 ファッション重視のサンダル等の場合は日頃よりも足にかかる負担が大きい事を考えて、万一の靴擦れなどに対処できるようケア用品は必ず持っていこう。

日射病に熱射病、貧血に熱疲労。次に倒れるのがあなたかもしれない…
 コミケであなたを襲う数々の身体トラブル。中にはちょっとした知識で対処できるものもある。知っておいて損はないぞ。
 日射病:日射病は高温環境下で汗をかきすぎた場合に起こる一種の脱水症状で、炎天下の一般行列で起こるのはほとんどがコレだ。
特徴として体温が高くなり、動悸が不規則になったり、汗が出なくなったりする。対策は簡単で、失った水分を補ってやればよい。ただし、いきなりよく冷えた水をたくさん飲ませると身体が受けつけない場合があるので、常温か少し冷たい程度の水を一口ずつゆっくりと飲ませること。スポーツドリンク等、塩分を含んだ飲み物ならなおベストだ。酒類は論外として、甘い炭酸飲料などもなるべく避けたほうがいい。
 熱射病:知名度は日射に劣るが、主に会場内など、暑く汗がうまく蒸発しないような環境下で体温の調節ができなくなる熱疲労の一種。
 多量の発汗、強いだるさやめまい、場合によっては吐き気など自覚症状は日射病とは明らかに異なる。
 対策は涼しいところで休ませる事に尽きる。ベルト、靴など身体を締め付けているものをゆるめて低い枕をして寝かせ、汗を濡れタオルなどでぬぐってやる、仰いでやるなどして上がりすぎた体温を下げてやればよい。
 本人の意識がはっきりしていてほしがるなら飲み物は飲ませよう。やはりスポーツドリンク類がベストだ。少しよくなってきたからといってすぐに動くと、より体力を消耗するので、無理は禁物、ゆっくり休もう。
 熱射病でも日射病でも意識を失うようなら即刻専門家を呼ぼう。
 貧血:体温が下がったり、顔色が青くなったりするので前の2つとは区別できる。靴を脱がせ、足を軽く上げた状態で服を緩めて寝かせ、身体を冷やさないように注意し、ゆっくり休ませる。
 食事をきちんと取っていないとおこることもある。少し休んだ後、確認して、気分が悪くないなら、エネルギー系のゼリー食品などを与える。
 最低限の対処はできる様、簡単な対策キットを携行することをおすすめしたい。数百円の投資で救護室のお世話にならずにすむならそれが一番だ。
一般参加者編のまとめ!
 どんどん大型化、多様化するコミケについて行くためには参加者にも進化が要求される。それは今回上げたような他ジャンルからのアイテムの導入であり、これまでに培われてきた数々のルールを自分のこととして再認識することでもある。つまりは身体中心から頭脳中心への移行といえるかもしれない。
 自分のやりたいことを認識するのは、そのために何をし、何をしてはならないかを認識する事でもある。いまやコミケに参加することは、望む、望まないに関係なく一つの大きな舞台を作り上げる役者になるということであり、あなたにはあなたの役割がある。新世紀のコミケ参加者はなかなか大変なのだ。
 
 

 

  サークル参加者編

chapter1 時を視よう
 サークル参加は時間との勝負だ。朝の入場から帰りまで、時間と周囲の状況を気にしながら動かねばならない。サークル参加者は全員同じ予定に合わせて行動している関係上、どうしても行動が集中しがちになる。スケジュールは完全に把握した上で、その集中をどうかわしてゆくかが頭の使いどころなのだ。

check1 タイムスケジュール
全日共通
06:30 駐車場開門
07:30 サークル入場開始
09:00 サークル入場終了 宅配便受け取り一時終了
09:30 サークル受付 見本誌提出 販売準備
09:30 各地区出入口閉鎖
09:45 不審物一斉点検
10:00 開場 一般入場開始 (宅配便受取再開放送)
12:30 不審物一斉点検
13:00 宅急便受付開始
  *11日は15:00より湾岸花火大会交通規制開始
15:45 不審物一斉点検
16:00 閉場
17:00 宅急便受付終了 (前日搬入開始)
19:00 開場閉鎖  (会場の誤植?) 駐車場閉門
 最終日(12日)
16:00 閉会
16:30 机・椅子撤収開始
18:30 撤収完了 反省会(自由参加)
19:00 完全撤収 駐車場閉門

[サークル入場]
 サークル入場時間はたった90分。その中で全サークルが効率よく入場するためには、『当日その場での予定』を減らしていくしかない。入場口で待ち合わせなどは、時間的にも混雑の面からも得策ではない。事前準備、連絡は念入りにしておこう。特に携帯電話(メールも含む)は8時ごろから通じにくくなってくるので、携帯以外の連絡方法を決めておいたほうがよい。特に自家用車で来場するサークルは、ちょっと渋滞に巻き込まれただけで簡単にタイムオーバーになってしまうが、遅刻は自分の責任。間に合わなかったときは無理を言わず準備会の指示に従おう。

[販売準備・受付]
 見本誌登録をスムーズに行うために、参加登録カードと見本誌表は必ず事前に記入し、荷物の取り出しやすい場所に入れておこう。自分のスペースについたらまず不審物チェック、次に参加登録準備だ。受け付けさえ済ませてしまえば開場までは結構時間がある。ゆっくりチラシの分別や販売準備をしよう。ただし、買い物などは早目に済ませないと出入り口封鎖で締め出されてしまうかも。
 準備が一段落したら、忘れずに近隣のサークルにも挨拶をしておこう。

[販売]
 これについては言う事はない。周囲に迷惑をかけていないかだけをよく確認しながら、自分の作品を見てもらうべく最大限努力すべし!
 特に声を上げての呼び込みはコミケの風物詩ともいえるが、近隣のサークルに必ず許可をもらうようにしたい。せっかく隣近所になったのだ。一期一会の心で1日お互いに気持ちよく過ごそう。
 特に、個人サークルの場合はお隣にお世話になることが多い。トイレや買い物のときも一声かけた上で貴重品は必ず持ってスペースを離れ、用を済ませたらできるだけ急いで戻るようにしよう。

[片付け・撤収]
 できれば開場時間いっぱい販売を続けたいところだが、帰りの混雑を考えれば多少早めに帰るという選択もアリだろう。自家用車で来場しているサークルは早目に動き出さないと渋滞に巻き込まれかねない(2日目の花火大会などは要注意だ)。
 周囲のサークルより先に帰る場合は、販売の邪魔にならないよう特に注意して片付けを行い、両隣のサークルにはきちんと挨拶をしよう。この場合椅子は机の上に上げずに、隣のサークルに『使ってよいので、帰る時に一緒に机の上に上げておいてほしい』と頼んでおこう。まだ販売している最中に隣に椅子を上げられてはよい気分はしないし、机に立てかけると机が倒れる危険性があるのだ。最終日は机、椅子の撤収がある。帰る時間に余裕があるならぜひ参加しよう。自分の使った机、椅子を運ぶだけでも充分だが、もしそれができない場合は一分でも速やかに会場を出ることも協力のうちと思えておこう。片付け作業が始まっているのにいつまでも机を占有したり、会場の隅で座り込んでいるなどというのは最低の身勝手だ。
 サークル参加は、一般参加以上にセルフコントロールやマナー、ルールの厳守が要求される。いや、それが可能だと信用されているからこそ、あなたはサークル参加者として認められているのだ。周囲への目配り、気配りを忘れずに。

chapter2 活用のススメ
 1サークルに与えられた空間は机半分、椅子2脚とその背後2m弱。そこに最大3人の人間とその荷物、おまけに本まで入るのだから大変だ。自分のサークルの荷物を与えられたスペースに納めることが周囲のサークルとうまくやる最初の一歩。さらに、サークルとして何を用意すべきか? 考えることはつきないぞ。

check2 ダンボール箱は大切に
 本が入っていたダンボール箱、片付かないからと早々に捨ててしまってはいないだろうか? それはもったいないぞ。スペース内の整頓のためにはダンボール捨てるべからず、なのだ。
 スペースについたら今日販売する本をまず箱から出し、冊数を確認する。本は新刊なら何十冊かごとに包装されているので、机の下にダンボールを1枚敷くか未開封の箱の上に包装のまま積む。この時点で箱から出してしまうのは箱を活用するためと、箱に入ったままだと本がすぐに取り出しにくく、角などを痛めてしまいがちだからだ。さて、その空箱にメンバーのカバンの中で最も不定形なものか不安定なもの(ナップザックやトートバッグなど)を入れてしまおう。後はその箱を中心に荷物を並べればそれだけでもずいぶん片付く。箱が複数あればきちんと並べてガムテープなどで仮止めした上で、食べ物や飲み物はこの箱、買った本はこの箱と決めておくのも言い。これなら買った本の不安定な紙袋がスペース内を塞ぐという事態も、せっかく買った本を蹴飛ばされたり曲げられてしまうという事態も防げる。
 スペース内に余裕があれば箱に大き目のビニール袋を入れて周囲のサークルと共同で使うゴミ箱にすればかさばらないし、感謝もされる。潰して荷物の下に敷けば埃除けになる。片付けの時にどうしても余ったらそのとき初めて捨てればいい。『ダンボール、捨てるは易し、されど得難し』なのだ。開場中は最大限活用しよう。

check3 備えあれば憂いナシ
 せっかくスペースという基地を与えられ、一般参加者より多くの荷物を置くことができるのだから、ほんの少し、みんなに役に立つアイテムも荷物に加えてみてはいかがだろうか? 特に自家用車来場をしているサークルならば多少荷物が増えてもそれほど苦ではないだろう。
 そのアイテムとは、『工具箱と救急箱』である。専門的なゴツイ物である必要はなく、カバンに入れるにはちょっと重くてかさばるな、と一般参加者なら思う程度のもので充分。世の中、それがないとどうしようもない者、というのがそれなりに存在するのだ。
 サークルがそういった装備を持つようになり、一般参加者も含めてお互いに助け合えるようになれば(少なくとも自分のサークルのメンバーの面倒が見られるようになれば)、準備会にかかる負担もいくらかは軽減できるハズだ。
 参加者はお客様ではない、というのはコミケの大前提だが、同人誌を売る、買う以上のもう少しだけ積極的な助け合いをはじめてもよいころだろう。
 それで『あの〜、徹夜行列してたんで風邪ひいちゃったんですが、風邪薬くれませんか?』なんてオロカモノが居たらメ一杯冷たく断ってあげよう。

スペースに用意しておこう! 救急箱と道具箱
 上の話に出てきた『用意しておきたいもの』の一例を挙げてみよう。今やほとんどが100円ショップで揃うものばかりだ。
 必要としていそうな人がいたら、知らない人でも貸してあげるのが基本だぞ。

救急箱:バンドエイド各サイズ 消毒薬(マキロンなど) ガーゼ2,3枚 ピンセット サージカルテープ 急冷パック ウエットティッシュ ポケットティッシュ ハンカチ(清潔なもの) 湿布・痛止軟膏(インドメタシン剤など) 風邪薬、頭痛薬、胃薬、下痢止薬など

道具箱:針金(シンチュウ線がやわらかくて使いやすい。0.3mmくらいの太さのもの) プライチャー(ペンチの親戚のような工具) 瞬間接着剤(ゼリー状のもの) 針と糸 ガムテープ(『梱包テープ』と呼ばれるナイロンのものが良い) ビニールテープ(絶縁テープ) ビニールひも(荷造りひもなど) カッター ドライバーセット ライター

 針金やひもの結び方など少しは調べておくとよい。このくらいの道具があれば壊れたカート位は楽に修理できるぞ!
サークル参加者編のまとめ
 参加希望者は増える一方で狭き門。ダミーは論外だが、初参加でも常連でもスペースはそのジャンルを愛好する多くの希望者の中からコミケという場を作るために与えられた責任だ。あなたの影で落選し涙を飲んだ人が必ずいる。『与えられたチャンスを愛好するジャンルを盛り上げるために全力投球する』、サークル参加の基本を再認識しよう。
 
 

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